気をつけたい 意外な落とし穴
ひと目惚れだけで選ぶのは後悔のもと
実際の企業選びでよくあるのが、転職サイトや求人情報誌を探して「よさそうな企業を選ぶ」という方法です。
でも漠然とした選び方は、“思いつきの衝動買い”と同じ。
時間が経つにつれて後悔することも多く、そうなれば取り返しがつきません。入社後1年経っても、「採用されてよかった」と思える企業を選ばなくては、せっかく転職する意味がなくなってしまいます。
選択基準の漏れは危険な“落とし穴”
求人企業の数は膨大。その中から「この1社!」という企業を見つけるには、転職の目的や希望条件に沿った選択基準をつくって求人情報を絞り込み、さらに細かなチェックをして応募先を選んでいく必要があります。
注意したいのは、意外な“落とし穴”です。多くの転職者は、在職中の職場で不可能なこと、不満なことばかりに目を奪われがち。恵まれている条件については「あって当然」と考えてしまい、ノーチェック……という人が少なくないのです。
入社後にチェック漏れに気づくのでは遅過ぎます。ひと通りの基本項目を漏れなく見ていくことを忘れないでください。
基本項目ごとに基準と優先順位を設定
一般的な基本項目は次の7つです。おすすめしたいのは、各項目に沿って希望や条件を書き出していく方法。
自分なりの選択基準を明確にして、求人企業とのマッチングを客観的・総合的に判断していきましょう。
応募先選びの基本項目と設定のポイント
職種や具体的な仕事内容
経理事務・営業企画・ネットワーク技術者など、職種を明確にすることは基本です。
それに加えて「やりたい業務(目標)」と「できる業務(売り)」を整理して、希望する業界・業種分野、主業務・守備範囲のイメージも固めておきましょう。
正社員か契約社員かなどの雇用形態
同じ企業に勤めても、雇用形態により業務の守備範囲や働き方が変わります。
正社員・契約社員・派遣・アルバイトなどの雇用形態、また雇用とは異なる業務委託などの特色も知ったうえで、自分がどんな理由でどんな働き方を希望するか決めておきましょう。
希望給与額と必要最低金額
希望給与額や年収と同時に、まず計算しておきたいのは、月ごとの生活に必須の最低金額です。必須最低額を押さえたうえで希望給与を設定すれば、昇給を予測した譲歩ラインも出しやすくなります。
現職が大手企業の場合、勤続年数が長い場合などは、転職後の初任給はダウンの可能性も大。
勤務時間や時間帯、休日・休暇
同じ8時間勤務でも始業・終業時刻は違うもの。交替勤務や深夜勤務の職場もあります。休日についても同じです。
家庭状況や生活スタイルを考え合わせ、対応できる時間帯の最大範囲、また最低限取得したい休日条件を出しておきましょう。
勤務地エリアや通勤時間
これまで遠距離の通勤・通学の実績がない人は、首都圏なら通勤1時間半程度を限度にすることをおすすめします。
本人が「大丈夫」と判断しても、採用側の「通えるか?」との疑念の払拭は難しく、また企業の交通費負担のうえでも不利になりがちです。
企業規模・従業員数など職場環境
企業規模や従業員数は「安定性」には直結しませんが、転勤や配属異動の有無、扱う仕事の規模や責任範囲、昇進・昇格、また福利厚生などに影響を及ぼします。
それらに関連する希望条件と併せて検討しておくことが大切です。
経営ビジョンや社風
たとえば歴史のある企業か、ベンチャー企業かで職場ムードも変わります。
上下関係の考え方、目標管理の手法、従業員の年代構成、資格取得や独立への支援、教育研修などの状況、また雰囲気がビジネスライクか家庭的かなど、快適さやキャリアづくりのうえで重視したい内容も具体的に書き出しておきましょう。
相手にだけ100点満点を望まないこと
また、選択基準づくりの際に欠かせないのは、自分の実力レベルや経験値と採用基準とのバランスです。
当然ですが、未経験者が相場以上の高給与を望めば失業状態を招くことになります。また、経験者や実力者の場合も、すべての希望条件のクリアを望めば応募先探しが難しくなるはずです。
選択基準には、転職の目的や自分のこだわりに沿って優先順位をつけておくのはもちろん、重要な項目でも譲れる範囲を見積もっておくことをおすすめします。「自分に合う企業探し」とは、自分の希望と企業側の希望がマッチする状況を探し出すことにほかなりません。
20代はここがポイント
業界や職種によっては「求人募集はアルバイトのみ。正社員はアルバイトから登用」といった採用方針を持つ企業も少なくありません。
とくに人気業界の未経験者募集は要注意。選択基準は、いい企業と出合うためのもの。
頭から「正社員が絶対条件」とするのではなく、求人傾向も調べたうえで柔軟に選択基準を設定していかないと、せっかくの企業を見逃すことになってしまいます。
30代はここがポイント
求人広告だけでは、企業の将来性・有望性、多忙さの度合いなどを読み取るのは困難です。ある程度の絞り込みができたら、業界紙やホームページなどで会社研究もしてください。
業績の推移をはじめ、新規出店・新事業の立ち上げ情報などが参考になります。また、そうした判断材料を入手できる情報公開に積極的な企業ほど、社風もオープンで働きやすい傾向があります。
40代はここがポイント
昨今の大手企業の破綻に見る通り、企業規模は必ずしも経営の安定性を示すものではありません。
また社風や職場環境などは、求人広告では判断がつきにくい事柄もあります。
詳しい情報を入手できない場合は、まず優先順位の高い項目を選び、同業者など周囲に評判を尋ねたり、面接で直に確認していくなどピンポイントでチェックしていくのもよいでしょう。