企業の実力を見極める
イメージだけでなく、多角的な視点から評価する
企業の魅力を見極めるポイントには、「将来性」「安定性」「収益性」「生産性」などがあげられます。これらを見極めるためには、資金力や営業力、開発力、経営者の手腕など、さまざまな視点から評価する必要があります。
「規模が大きい=安定性あり」「知名度が高い=成長性あり」といったようにイメージだけで判断すると、「入社してみたら思っていたのと違った」ということもよくある話。
思わぬ落とし穴に陥らないためにも、入念な事前チェックが必要です。
企業を見極めるポイント
マイナビ転職の職種情報を例に、各項目を読み込むポイントをチェックしていきましょう。
営業収益はどれくらい出ているか?
「営業収益」とは、売上総利益(粗利)から経費を差し引いた利益のこと
企業の経営状態を見極めるうえで重要な数字です。株式を公開している企業であれば、一般に財務諸表といわれる損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を見ることで経営状態を知ることもできます。
過去3期分くらいの推移は見ておきましょう。毎年、順調に伸びていればベストですが、先行投資のため一時的に利益が減っている期がある場合も。この場合、翌期か翌々期に回復していれば安定成長していると判断できます。
上場企業なら「ROA(総資本利益率)」も確認しておきたい
企業に投下された総資本(総資産)が、利益獲得のためにどれだけ効率的に利用されているかを表す数字。
業界平均以上であれば、収益性の高い企業だと判断することができます。
「ROE(株主資本利益率)」が高いほどいい企業といえる
1株当たりの利益(※EPS)を1株当たりの株主資本で割って100を掛けた指数のことですが、株主から集めたお金(株主資本)を、いかに効率よく活用して利益をあげているかを意味する指標となります。
この数値が高ければ高いほど、いい企業と言ってもよいでしょう。ROEが高い水準で推移していれば、その企業の将来的な収益性や成長性も有望で、株主への利益の還元も期待できます。
※EPS/税引き後利益を発行済み株式数で割ったもの。株主が持っている株式1株について、企業がどれだけの利益をあげたのかを表します。企業の収益力を見る指標の1つで、EPSが高いほど収益力も高いと言えます。業績の指標としては最も基本的なもので、手っ取り早く企業の良し悪しを判断するには、この数値を見ればよいでしょう。
売り上げは順調に伸びているか?
ここ数年の売上高の推移から、資金調達がしやすい企業かどうかがわかる
同じ業界のライバル企業やトップ企業とも比較検証していきたいところ。
もし面接時に売上推移を質問し、担当者が嫌な顔をするようなら、安定性を疑ったほうがよいでしょう。
過剰な投資を行って売上を伸ばしているケースに注意!
規模の拡大を追求するため借入金が膨れあがっている企業もあるので要注意! 不安がある場合は、面接で「事業拡大のための資金をどういう形で調達されていますか?」といった質問をしてみましょう。
ここでも、嫌な顔をされるようなら経営の健全性を疑うべきです。
経営陣の事業姿勢が見えるか?
社長や役員に質問する機会が与えられたら、「業績を伸ばしている理由は、どこにあるとお考えですか?」と質問をしてみよう
市場環境や顧客特性をしっかり分析している経営者なら、「○○な顧客をターゲットとして、△△な商品・サービスを提供しているから」といった、具体的な回答が返ってくるはずです。
企業としてしっかりとした理念を持っているかについても確認しておきたい
特に創業して間もない企業の場合、経営者の理念が企業運営に大きく影響してきます。
自分の儲けだけを目的に、ブームに乗ってベンチャーを立ち上げる経営者も少なくありません。
設立の目的や企業理念、社長の人物像・経歴については、企業のホームページ上に掲載していることが多いので事前に調べておくとよいでしょう。
組織運営はうまくいっているか?
組織の強化拡大と、運営上の障害対策がうまく図られているかを見極めることがポイント
具体的には、次の点を確認しておきましょう。
・円滑な事業推進のために、周辺の関係者間の理解を得ているか?
・事業効果を高めるために、必要に応じた専門家の活用を考えているか?
・継続的な運営を行うために、自立した組織運営ができる体制になっているか?
・責任の所在が明らかになるような体制になっているか?
以上のことは、離職率を知ることからも推察できます。離職率が高く社員が定着しにくい企業であれば、経営陣が社員の意見を聞き入れていなかったり、現場の仕事の割り振りに無理が生じている可能性がある。
ただ、離職率の算定基準は企業によって異なるため、離職率が気になる場合は、数字の「分母」と「分子」について確かめたほうがよいでしょう。
可能であれば、現役社員から情報を収集するのが最も効果的です。
新商品、新サービスを積極的に展開しているか?
企業の成長性を推し量るうえでは、新商品や新サービスの開発について、どのくらい意欲的かということも重要なポイントとなる
面接などで、現在どのような新商品や新サービスの展開を予定しているか聞いてみましょう。
特に設立して間もない企業では、新商品・サービスを意欲的にリリースして、早い段階で柱となる事業を確立できるかどうかが重要なポイントとなる
また、長い歴史を持ついわゆる老舗企業でも、時代のニーズに柔軟に対応していく姿勢が不可欠。
顧客のニーズを発掘し、新しいコンセプトの商品・サービスを開発したり、既存のものについても絶えず改良を重ねている企業は有望視できます。
企業ホームページの「沿革」や「ニュースリリース」欄をチェックすることで、新商品・サービスがどれくらいの頻度で開発されているかが確認できる
また、この1年でリリースされたサービスや商品に何があるかについて、業界紙を検索するという方法もあります。
何度も記事に取り上げられたことがある企業なら、新商品・サービスの開発に積極的だと判断できます。
主要取引先はどんな企業か?
主要取引先を確認することで、財務の健全性や開発力、技術力、マーケティング力を推し量ることができる
取引先が業界トップクラスの企業なら、もちろん申し分ありません。こうした企業が外注契約を結ぶときには、外注先の信用調査を行うケースが多いのがその理由です。
取引があるなら、その企業の健全性が認められていると見ることもできます。
複数の業種にまたがる企業と取引があるかどうかも要チェック!
たとえば、電子部品を製造している企業の場合、自動車メーカー、家電メ-カー、装置メーカーなど、複数の業界に供給しているなら、技術力のみならず営業力も優れている企業であることが多いと言えるでしょう。